根付

 根付は着物から洋服の生活スタイルの変革が始まった明治維新以降、携行品は懐、帯下からポケットに納めることで、やや姿を消したかに思えた。
 留め具の視点でなく、すばらしい技巧の作品が海外の趣味人の収集の的となった。
 現在、海外にも根付作家がおられ併せてオークションにも参加しておられる。
 左図は黄楊、鉄木、象牙、マンモス牙、竹 等の素材に彫られた根付で、中国雑貨、骨董店で売られている。

 古今東西、鞄や貴重品等の携行品の落下防止に把手、帯、紐等を用いる。小銭を入れる巾着袋、喫煙具等の小物には紐の端に留め具として珠が付けられていた。 これが根付の始まりである。
 やがて巧みな彫刻が施された掌中の芸術品が誕生する。根付製作は彫刻刀、回転工具を用いて緻密な木材、牙、角等を切削研磨して得られる。 根付製作は根気がいる。基礎の段階は素材の特性、工具の研磨、安全作業を理解して簡単な物から始めるが徐々に凝る物を選択するようになる。
 デザインは彫りたい衝動にかられたテーマが最も相応しい。構想のための動機づけは美術鑑賞、自然観察が役立つ。大袈裟ではあるが、人生の苦楽は創作の畑に、 良き種となり、やがて花が咲き豊かな実となる。こぶし大の塊に刀を入れて、余肉を削ぎ落として輪郭が具体化してくると夢中にさせるものがある。